ランダム要素のない戦略ゲームのゲームデザインについて
マリオネットの新キャラ「ポーン」の仕様を大きく変更した。その時に思ったことを書く。(ゲームデザインの定義を明確に知らないので,タイトルが間違っていればコメントお願いします)
マリオネットと勝利条件
このゲームは4つのユニットを操作して戦う戦略ゲームで,勝利条件は
①キングの撃破
②敵ユニットを6体撃破(撃破されてもユニットは復活するので6体)
である。
③時間切れの場合はキングのHPが多い方
典型的な戦略
これまで3回大会を開いてきたがその中で生まれた代表的な戦略を4つ紹介する。
戦略1:前半キング直行型(勝利条件①)
対戦開始直後,キングを攻めに行く戦略。キングのHPは勝利条件に関係するが,敵陣での数的不利な戦闘になるので②の条件で負ける。
(右側 青)
戦略2:後半キング直行型(勝利条件③)
終盤までなんとか耐えて,後半キングのみを狙う戦略。勝利条件③を狙うもので,②
を狙う相手と相性がいい。終盤までどうやって耐えるか,最後どう攻めるかが戦略として重要になる。
(左側 赤)
戦略3:ビショップ投資(勝利条件②)
このゲームにはビショップというユニットがあり,このユニットは攻撃のたびに攻撃力が1.1倍となる。これは敵にはもちろん味方にも適用される。このことから上級者の戦略として,味方ユニットを攻撃することで攻撃力を上昇させ,後半一気に畳み掛けるという戦略が生まれた。これは味方を撃破されるリスクを取りながら後半相手を殲滅する戦略として人気がある。
(右側 青)
戦略4:ビショップ投資崩し(勝利条件②)
戦略3のビショップ投資が完了する前 or 分散さしてビショップを倒す戦略。相手は投資に力を入れているので定盤にビショップを狙えば比較的倒しやすく,大会でもよく使われている。
(動画左側 赤)
新たな戦略のために
この中でまず勝てないのは戦略1である。つまり勝利条件①を狙うのはプレイヤーにとって悪い戦略であり,大会出場のプレイヤは②か③を狙っている。
この時,開発者として思うのは①を狙える戦略を新キャラの実装で実現すること。
そこで,私は「キング特攻(キングへの攻撃2.5倍)」のポーンを追加した。
これで戦略1は負ける戦略ではなくなり戦略の幅が広がった。。。ように感じた。
短期決戦の虚しさ
だが,実際対戦してみるとなぜだか虚しさを感じる。戦略1で一気に勝利することは楽しいかもしれないが,何かが足りない。その理由はなんだろうか?
それは戦略1にポーンが入ることで対戦の流れが単調かつ速くなったことだ。
・攻め:ポーンを使って相手のキングを攻撃する:成功=勝ち・失敗=負け
・守り:ポーンを殲滅する:成功=勝ち・失敗=負け
の展開があまりにも速い。展開が速い理由として,ポーンはビショップのように投資するメリットがないのであとに攻めようが先に攻めようが能力値が変わらないので,相手が投資する前に,先に攻めた方が有利となる。したがって序盤に攻め込むのが定石となり展開が速くなる。
展開が速くなって虚しさを感じるのは,このゲームが,争いではなくゲームだからだと思う。実際命を賭けた戦いは勝てばそれだけでいいが,ゲームである以上相手との読み合いを楽しみたい。また,大富豪のようなランダム性があれば,一気に勝負がつくのも楽しいかもしれないが,このゲームはランダム性が一切ないので毎回全く同じ戦略が取れる。参考にしてきたゲーム「将棋・チェス・囲碁・オセロ」を見ても,序盤に勝利条件に近づく戦略が悪いのは明らかである。このことからも,ポーンの「キング特攻」を実装したのは大きな間違いだったことがわかる。
どうあるべきか?
では,ポーンはどうあるべきなのか?勝利条件①を目指す戦略を実現するにはどう実装すればいいのだろうか?私の出した答えは
「長期的に勝利条件①を実現する実装」
である。
「キング特攻」の失敗は短期的な勝利条件①を実現する実装であった。これは短期決戦をうみ,読み合いを楽しむゲーム性を崩してしまった。よって長期であればおそらく問題ない。では,長期で勝利条件①を実現する実装とは何か?その答えの一つが
「毒(攻撃が決まればその後も継続的にダメージが入る)」
であると思う。これは攻撃を仕掛けてすぐに効果が出るのではなく,その後も戦い続けなくてはいけない。また,相手を毒にするには,相手に近づくリスクもある。一方,攻撃を受けた側は,毒で倒れる前に相手を撃破する必要があり,これは戦いをより激しくする。
まとめ
以上をまとめると
・ランダム要素のない戦略ゲームには,短期に勝敗がつく要素がない方が良い
・仮にそのような要素をつけるときは,カウントダウン式などのように勝敗がつくまでの猶予を与えた方が良い
追加(3/11)
この記事の後さらに仕様変更をしました。 理由は「毒」を扱えるゲームシステムではなかったからです。
リンク
マリオネット公式サイト
https://fromalgorithm.jimdo.com
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