なぜε-N論法は「N+1以上」「2ε」を考えてもいいのか
はじめに
数列がaに収束することの定義は
(1):「どんなε>0を考えたとしても,N番目以降の数列がaのε近傍に入るようなNが存在する」
であるが,本によっては
(2):「...ある番号N+1以降の数列がaのε近傍に入るような番号Nが存在する」
(3):「...ある番号N以降の数列がaの2ε近傍に入るような番号Nが存在する」
など,Nとε近傍に違いがある。今回は定義の違いによる図の操作の違いを見ることによって,定義の本質を明らかにし,その本質が3つの定義で違わないことを嘘も含めながら見ていく。
※ スマホではグラフが小さくなるのでPCで見ることをすすめる
ε-N論法の定義の主張
まず(1),(2),(3)の定義で主張していることは条件を満たす番号Nが存在するかどうかである。「N以降」が「N+1以降」に変わることや「ε近傍」が「2ε近傍」に変わることで,番号Nの存在性が変わるかどうかを考えればよい。
「N以降」の変化による存在性への影響
下の図でεを決めたあと,N番目以降の数列がε近傍に入る場合とN+1番目以降の数列がε近傍に入る場合とでNの存在性に違いがあるか考えて欲しい。
Nの大きさは違うかもしれないが,どちらも条件を満たすNが存在することに違いはない。つまり(1)を満たすNが存在すれば(2)を満たすNも存在し,その逆もなりたつので(1)と(2)は同じ意味となる。
余分な話かもしれないが定義を一般的に書けば
「どのようなε>0を考えても,ある番号f(N)以降の数列がaのε近傍に入るようなNが存在する」
となる。つまり,ある番号を決める基準の番号Nが存在すればよい。そして定義ではf(N)の一番シンプルな場合f(N)=Nが採用されていると僕は思っている。
ε-N論法のεの意味と存在性への影響
εとはもともとerrorの頭文字のことで,定義では極限値からの誤差を意味する。よって,極限値からの誤差がεか2εかの違いで,条件をみたす番号の存在性に違いが出るのかを考えればいい。
下の図で,εのときと2εのときでNの存在性に違いがあるか確かめて欲しい。
やってみればわかるように近傍の大きさの違いでNの存在性に違いはない。特に,εが小さいとき,見かけの違いはほとんどない。
まとめ
今回は三つの定義を比べることで,収束の定義の主張は
「極限値からのどのような誤差を考えても,ある番号f(N)以降の数列が誤差内におさまるようなNが存在する」
であることがわかった。また定義のイメージだけでなく,記号の本質的な意味についても深めることができた。
注意!!! (1)(2)(3)の同値関係の証明は今回の説明と大きく違う。よって厳密な証明は気が向けば添付します。もしすぐに知りたければコメントください。
参考図書
お馴染みの本です。今回の話は本にあまり書いてないことですが本では普通に使われている性質なので,併せて読むと理解が深まります。