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マリオネット通信 #BGM解説

はじめに

今回は過去記事で宣言した通り、マリオネットAIのBGMについて作曲者に解説してもらいます。 

解説の前に,,,マリオネットAIとは?

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チェスのように駒を動かして相手を倒すゲームです。最大の特徴は、キャラクタの動きを事前にプログラム して対戦させるところです。

似たゲームとして、"カンルネージハート","アーマード・コア","ff12(ガンビット)"などが言われています。詳細はこちら

 

BGM解説

みなさんこんにちは。BGMを担当したryoです。

前回の記事で勝手に予告されていた通り、今回は音楽の解説をさせていただきます。

 

解説するにあたって、「難しくてもいい」「音楽用語を連発してもいい」と言われているので(笑)、かなり深い話になりますがご了承ください。

 

 

現在マリオネットAIで流れる曲は、対戦画面とメニュー画面にそれぞれ1曲ずつの計2曲です。


【MarionetteAI】 対戦画面 【BGM】 

 


【MarionetteAI】メニュー画面【BGM】

簡単な総評 

対戦画面の曲は、マリオネット、つまり「あやつり人形」を意識したワルツになっています。ワルツといっても決して優雅な踊りではなく、テンポの速い、どこか不穏な空気を感じる不器用な踊りです。基本は短調ですが、暗くなり過ぎないよう、長調と行ったり来たりしてあいまいにするように心掛けました。

 

それに対してメニュー画面は、「休息・平穏」をイメージした緩やかでちょっぴりコミカルな曲です。こちらは終始長調で通しました。弦楽器のピッツィカート(爪弾き)のみで構成されているのが特徴です。これは、AIを組むあいだずっと流れているので、長く聞いていてもなるべく耳障りにならないように、との思いからです。

 

詳しい解説

対戦画面の曲

 もともとチャイコフスキーの「金平糖の精の踊り」のような曲にするという話があって、実際、ゲームの開発段階ではこの曲が使われていました。そこで、似たような雰囲気を保ちつつ、よりこのゲームに適した曲を作ることにしました。まずは拍子を2拍子から3拍子に変え、楽器編成もチェレスタなどを使わない、古典派~初期ロマン派の標準的なオーケストラにしました。調もティンパニの響きを考慮して、ホ短調ではなくロ短調を選びました。

 

最初の二つの力強い和音は、いかにも曲が始まる感じがしますが、それ以上に、ループしたときの「続いてきた感じ」を意識しています。序奏は金平糖の精の踊りのコード進行をパクりつつ大いに参考にしつつ、ペダルノート(低音を持続させる手法)にはせずにちゃんと進行させました。低音の「B-C#-D-C#-F#」がいい感じに不穏です。

 

次に主題についてですが、初期の構想では、とても不安定な響きの減七の和音を多用して、これを半音ずつ下行させていくような旋律を考えていました。しかし、暗さや不気味さが際立ってしまったので、一か所に半音階を残したのみで、基本的にダイアトニック(全音階的)な仕上がりとしました。また、明確に鳴らしていないので聞き取るのは難しいですが、主旋律のF#-F-E-D という動きに対して、逆向きの F#-G#-A#-B という旋律的短音階が隠れているのもいいところです。

 

ホルンとクラリネットで主題を提示したあと、旋律が弦楽器に受け渡されますが、ここで調性をあいまいにしてみました。それまではっきりとしたロ短調だったところ、急にホ長調のようなロ長調のような、でも減七の和音が出てきてやっぱりロ短調のような……。というかこれは「リディア旋法」ですね。つまり、ホの音が主音になっています。次にチェロとコントラバスが旋律を奏でると、ロの音が属音なのか主音なのかがあいまいになります。ホ長調に固まりかけたところ、bVI であるハ長調に転調します。いえ、これも4度が半音上がっているのでリディアンですね。

 

ニ長調を経由して、すぐに長七の和音が現れます。ここから終わりの属七の和音までは少々手抜きで、ポップスでよく耳にする四和音の進行そのものです。メロディーにも主題のモチーフを使えておらず、正直、音楽性・創造性よりも早く仕上げることを優先してしまった部分です。お決まりのように Bb-A-G と一つずつ下がっていき、減七の和音を挟んで F# に戻ってきます。ここでせめて増六の和音を使っていれば面白かったかもしれません。最後の半終止は、もともと短9度を加えた短調的なものでしたが、暗いとの指摘を受けて、長9度に変更しました。F#-A# と強い推進力を生みだして、冒頭の F#-B につないでいます。

 

全体として、マリオネットたちがぎこちなく踊りつつ戦う様子を表現しました。

 

メニュー画面の曲

雰囲気は対照的ですが、冒頭のコード進行を対戦曲の冒頭に似せており、ちゃんと関連性も持たせてあります。主題の旋律が入ってから4連続で半終止を使ったのはやり過ぎな感じもしますが、そのあと下属和音(サブドミナント)で始まるフレーズに出てくる上主音の副属七の和音(=スーパートニックのセカンダリードミナント)が新鮮です。しかも旋律は倚音(いおん=アッポジャトゥーラ)を奏でるため、和声的には増三和音の響きが聞こえてきます。全くと言っていいほど機能的な動きのなかったこの曲で、初めて動きを感じる瞬間です。バスが E-E#-F# と上がっていき、そのままごく自然な進行で属和音へとつながります。

 

曲を通して、落ち着いた雰囲気を出すよう心掛けました。



解説は「長ければ長いほどいい」とは言われていたものの、さすがに長すぎたでしょうか。以上、解説でした。

  

終わりに

ryoくん解説ありがとうございました。なんもわからんのに、あの時はダメ出ししてごめん。。。

 

さて、開発者である私からお知らせがあります。

その1

なんと。。。マリオネットAIのiPad版が出ました!

マリオネットAI for iPad

マリオネットAI for iPad

  • Tsunehiko Shimazu
  • 教育
  • ¥720

注意としてオフライン版です(大会参加や他人のAIと対戦できないです)。審査の関係でそうなってしまったのですが,ネットワーク環境にとらわれないので電車の中でも遊べます!また,教育用(アルゴリズム学習)として購入していただけると嬉しいです。詳しくは次の記事で紹介しようと思います。

その2

8月5,6日にある、全国エンタメ祭りにインディーゲームとして出展します。iPad版を2つ用意していますので試遊しに来てください!

リンク

・マリオネットAI公式サイト:https://fromalgorithm.jimdo.com

・ぜんため公式サイト:http://zentame.com/event.html#3